2016年3月15日火曜日

太鼓の皮の寿命は何年持つでしょう?

こんにちは、六代目彌市です(^^)/


先日、滋賀県の高島市マキノ町にあります

琵琶湖の西側になるのですが、

名願寺さんというお寺さんから古い太鼓の修理を預かってきました。







確かに古い太鼓なのですが、

皮は両面とも決して破れているわけではありませんでした。




それでも、外見は古くなっており

さすがにそろそろ張り替え時かな~という感じの音でした(^^♪


さて、古い太鼓と言えば!


やはり胴の中を見るのが楽しみなのです(^^


今回はそこに一体どんな歴史が刻まれているのでしょうか?


早速皮を外して覗いてみると
ひとつの銘が浮かび上がってきました。





昔の人はいつも達筆ですね~( ;∀;)


所見では、私達でも解読がすぐできず

今回も太鼓の胴内の銘から歴史を研究しておられる

九州大学の服部教授に写真を撮って救いの手を差し伸べました(^^)



そこには、こう書かれておりました。


【嘉永元年 酉四月吉日

岡州高島郡川尻村 六兵衛(花押)】



嘉永元年、とは1848年。

今から168年前に作られた太鼓でした。

そして、高島郡川尻村とは

現在の高島市今津町にあたる場所です。



太鼓の場合は、200年前後の古さは

結構あるので特別古いわけじゃありませんでしたが、

今回は驚くべき点が一つありました!


それは“皮”





先ほどもお伝えしましたが、

音は張り替え時期が来てましたが

決して破れている訳ではありませんでしたので


前回の修理はいつ頃だったかな~と

思っていると、


なんと!


この皮!


嘉永元年当時に張られた168年前の皮だったのです( ;∀;)



なぜ、その事が分かるかと言いますと、

太鼓の皮は最終的に鋲を打ちますよね。


張り替えの回数というのは、

皮を外した時に見れる、鋲の穴の数跡から知ることができるんです。


今回皮を外したあとの鋲の穴の跡がこれです!




鋲の跡が一つしかないんです!


と、いう事は


今回が初めての張り替えということなんです( ;∀;)



胴の中にも確かに嘉永元年に作られたときの

記録しか残ってませんでしたから間違いありません。



いやーーー、


古い太鼓はいくらでも修理してきましたが


さすがに100年以上破れないで
残っている皮を見たのは初めてで驚きました( ;∀;)





胴の素材はケヤキでした。

一部割れがあったり多少の痛みはありましたが

それでも、もともと持っているこの太鼓の素材のチカラがありますから

表面を綺麗に磨いて削り、

再塗装することで、ここまで素材のチカラがよみがえってくれました(^^♪





今では、檀家さんが5件しかなく

今回は、その檀家の方々が古くなってみかねた

太鼓の修理を寄贈してくださり、実現しました。



太鼓の皮って何年くらい持ちますか?


よくそんな質問をされますが、


皮の寿命は使用頻度によって

大きく変わるので早ければ数年でもやぶれますし、


長ければ何十年と持つものです。


それでもさすがに168年は驚きましたよ(^^♪

もつものですね~!







最近よくこのような言葉を聞きます。


“良いモノを長く愛用する”


そこで、考えてみてほしいのです。


良いモノだから長く愛用されるのでしょうか?



あなたの周りにある、“良いモノ”を思い浮かべてみてください。



いかがでしょうか?



私は“良いモノを長く愛用する”ことはとてもとても

すばらしいことだと思いますが、


なぜ!?良いモノは、長く愛用されるのか?



そこにこそ、大切な“答え”がねむっている。


そう思っています。



良いモノというのは、そこに必ず深い“理由”があるんです。



“理由”なきものは残されません。



その“理由”の中に、


今も昔も変わらぬ、大切な“知恵”がある。



今回修理させていただいた太鼓は


私達の子供の子供の子供の子供のそのまた子供あたりが

再び修理することになるのでしょうか( ;∀;)



気の長い商売で、お金の事を言えば

採算は合わないのかもしれませんが、


本当の価値に触れられる事こそ、最大の財産です。



貴重なご縁に感謝です(^_-)-☆